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保存推進事業
国登録有形文化財 旧小野瀬邸
概要
所在地 龍ケ崎市龍ケ崎市上町4252 (個人所有の住居に付き、原則内部の見学は原則出来ません)
小野瀬邸の当主は代々小野瀬忠兵衛を名乗り、肥料商として財を築きました。
近世中期以降、自給肥料にかわり金肥(きんぴ)が用いられ、とくに干鰯・〆粕などは綿作には欠かせない肥料で、この干鰯商人として大きくなったのです。
平成14年(2002)、上町の小野瀬邸が競売となり存続が危ぶまれる事態となりました。これをきっかけに当NPO法人の前身「龍ケ崎の価値ある建造物を保存する市民の会」が発足しました。そして、保存のための運動を展開する中において、龍ケ崎市内の在住の菅井氏が同邸の所有者となられ、幸いにもその姿を留めることができました。そして当会は文化財としての価値を調査をし、登録文化財申請のお手伝いをしました。また、様々なイベントを開催し、古い建物の素晴らしさをアピールして来ました。そして平成16年(2004)龍ケ崎市第一号となる国有形登録文化財に認定され、私たちの活動の大きな成果となりました。
旧小野瀬邸の建築様式
今上町に残る小野瀬忠兵衛邸の道路に面する店舖は4代忠兵衛による大正13年建築(棟梁天野源吉)で龍ケ崎地方の経済発展の歴史を伝える価値ある建造物です。平成16年3月4日、旧小野瀬邸は店舗と明治初期の建築と鑑定された母屋の2点が登録有形文化財に登録され、その証書が交付されました。小野瀬昇家には弘化3年(1845)の「本屋敷普請帳」、安政6年(1859)、文久2年(1862)の「普請入用帳」が残されているのをみると何回かの改築が行なわれ、母屋の大部分は文久2年の普請によるものかもしれません。
実はごく最近になって、大正9年11月作成の「小野瀬家新築設計図」(第1号~第5号、縮尺100分ノ1)を含む9点の設計図と店舗・母屋「東側建図」(60分ノ1、青焼)1点が発見されました。「東側建図」を見ると設計段階では店舗・母屋総二階の豪華な造りになっており、恐らく震災のため、新築は店舗のみにとどまったと思われます。
なお、 母屋は老朽化が著しく、近年所有者によって修繕されました。
(1)平面関係について
旧小野瀬邸は町屋棟を中心に住居棟がL字型に配置されています。
町屋棟は
木造2階建て:間口約9.1m(約5間)×奥行き約5.5m(約3間)
通り側住居棟は木造2階建て:間口約16.4m(約9間)×奥行き約5.5m(約3間)
背面側住居は木造平屋:間口約17.3m(約9.5間)×奥行き約5.5m(約3間)
(2)外観について
町屋棟は木造出し桁造りで、欅材を多く用い、高い2階建ての典型的大正期~昭和初期の町屋作り建築の特徴を良く備え、質も高く、豪商の商う町屋建築の印象を受けます。住居棟外観からは、桁から下の壁を押縁下見板張にし、それ以上の壁を漆喰塗りにする同期の伝統的和風住宅の特徴を良く備えています。
(3)町屋棟および住居棟内部について
町屋棟室内は通常の町屋に比べて天井高は高く、また、室内中央部には約45cm(約1.5尺)近くの立派な大黒柱があります。これ程の大黒柱は他に類を見ません。
住居棟には、意を凝らした床の間付きの座敷が3室(その1~その3)あります。
その1
通り側住居棟の奥座敷の床の間には二重の落掛(おとしがけ)を付け、駆け込み書院との境には2本の竹の袖柱を建て付け、床は45cm程の浅い置き床式で、袖壁には新趣の潜り(もぐり)があり、数寄屋造り的趣向を思わせます。
その2
同棟の2階にも新趣の座敷があります。この座敷の床の間は、浅い踏み込み床で、落掛には方竹(ほうだけ)を用い、床脇は簡略な釣棚と通し板の数奇屋的座敷であります。
その3
町屋棟2階に10帖の座敷があり、1間の床の間と1間の天袋付き違い棚と半間幅の狭い書院棚があります。この座敷には長押(なげし)が廻され、書院造りの体裁を持ち、他の2室の座敷の中では最も格の高い客室の扱いと思われます。
全体に建築普請は仕事が丁寧で、欅材を多く用い、町屋棟部分が公的な施設と見られ、座敷の質も高く感じられます。住居部分には数奇屋的意匠を凝らした部屋が多く見られます。町屋棟が「行」的空間であるならば住居部分は「草」的空間と言えます。
総括
以上のように、代々の小野瀬忠兵衛は龍ケ崎の発展にとって重要な役割を果たしてきました。その営みの本拠となった小野瀬邸は、龍ケ崎市の発展の筋書きの中でその証として、記念的位置を占めるランドマーク的なものであります。
また、旧小野瀬邸の建築は、大正期~昭和初期町屋建築と和風住居建築の特徴を備え、全国的視点から見てもその質は高いと言えます。